多様な学びの実践事例

写真: NPO法人Hug 篠田阿依さん

町や地域の人々と共に、子どもを真ん中にした“居場所づくり”を

NPO法人Hug 篠田阿依さん

松川町で、フリースクールをはじめ、多世代が交流するカフェや子ども食堂、学習サポートを行っているNPO法人Hug(ハグ)。町や地域の人々と連携しながら、子どもたちに多様な学びの場や安心して過ごせる居場所を提供しています。理事長の篠田阿依さんにお話を伺いました。

多様な選択肢があることを知り、自己決定できる力を付ける

現在、登録しているのは小学校1年生から中学3年生まで、約20人です。町内在住の子だけではなく、周辺の市町村から来ている子もいます。月曜~木曜が活動日になっていて、活動日の午前中は概ね、一人一人がそれぞれ学びを深める「enjoy」タイム、午後は特別活動として、グループで地域活動や体験活動をしたり、スポーツをしたりしています。子どもたちは来る時間も帰る時間も自由で、午前中だけ学校の授業に出たり、給食だけ食べに行ったりという子もいます。特別活動では、年齢の違う子どもたちが一緒に取り組み、互いに教え合ったり、助け合ったりする姿が見られます。参加するかどうかは本人の自由。ここでは「やる」「やらない」という選択はどちらも同等に認めていて、自己決定することを重視しています。

私は子どもたちにとって、いろいろな大人に出会うことが大切だと考えています。学校生活では、教員以外の大人と関わる機会が少ないですよね。ここのスタッフは元教員や子どもに携わる活動をしてきた人など多様な経験を持っていて、フリースクールで15人ほど、学習サポートも合わせると30人ほど。それ以外にもさまざまな場面で地域の人々が支援してくれていて、畑で採れた野菜を持ってきてくれたり、フルーツ狩りの体験をさせくれたりしています。少子化が進む中、「地域の子どもは皆で大事に育てていこう」という気持ちを持っている方が多いのではないでしょうか。年齢も職業もさまざまな大人たちと触れ合うことで、いろいろな生き方、多様な選択肢があるということを、子どもたちに感じてもらいたいと思っています。

地域との連携、保護者と学校と本人の「思いの共有」が鍵

2019年にフリースクールを始めた当初から、松川町は全面的に協力してくれていて、現在は町の職員の方が常駐しています。町内の子どもを公用車で自宅まで送迎したり、ここにない学習教材を学校から借りてきてくれたりと、マンパワーで支援していただいています。学校の先生も気軽に訪ねてきてくれます。体育館にいると授業の空き時間の先生が来て、一緒にバトミントンをしていることもありますよ。ほかにも、絵の得意な子に学級旗のデザインを頼んだり、ここで描いた絵を学級だよりに載せてくれたり。学校と関係が途切れるのではなく、つながりがちゃんと続いています。子どもにとって、得意なことを認めてもらえるような機会は、学校だけではなく地域の中にもたくさんあることが理想的ですよね。

子どもたちと一緒に毎年、目標シートを作っていて、そのシートをもとに本人と保護者、スタッフが一緒に面談をします。まずは本人が何を望んでいて、ここでどんなことをしたいと思っているのかを話してもらい、それから保護者の方がどんな願いを抱いているのかを話してもらっています。お互いが思いを聞き合って、そこで私たちがどんなサポートができるのかを一緒に考えます。目標シートは、本人と保護者の許可があれば、学校にも提出します。そうすることで、子どもを中心に周りが皆、同じ方向で進んでいけると考えています。大切なのは「子どもが真ん中」であるということ。例えば保護者が「もっと勉強してほしい」「いろいろな活動に参加してほしい」と思っていても、本人がその段階になければ、お互いイライラしてしまいます。まずは子どもの意思を確認して、同じ目線になって、どう寄り添うのかを話し合って、共有します。目標といっても内容はそれぞれで、「スポーツをやりたい」「〇〇のテストで×点を取りたい」という子もいれば、「友達と仲良くなりたい」「今の生活を続けたい」という子もいます。どんなことでも本人の目標なので、否定はしません。こちらから、一方的に何かをやらせようとは思わないようにしています。

誰もはぐれることのない、地域のネットワークづくりを

Hugは2017年に法人化して、最初は月に6回、子ども食堂と学習サポートを行っていました。最初は商店街にある店舗の一室を借りていましたが、通う子どもたちも、協力してくれるボランティアの人もどんどん増えて、「居場所づくり」が求められていることを実感しました。2019年、日本財団の助成や町内の企業の支援を受けて、現在の場所に移転。子ども食堂の経験から、子育て世代、特に乳幼児を連れたお母さんが周りを気にせずゆっくり食事ができる場所が少ないと思い、安心して過ごせる、居場所になるようなカフェを併設しました。現在、週1回カフェで子ども食堂を開いています。活動理念は「共にはぐくみ、1人ではぐれることのない地域のネットワーク作りを目指して」。子どもたちの生の声を届けたいと、イベントや作品展なども行っています。これからも、地域の皆さんと接する機会を増やして、さまざまなニーズに応じた居場所をつくっていきたいと思っています。