多様な学びの実践事例

写真: 子どもサポートチームすわ

個人を尊重してくれる環境で、“未来”を描けるようになった

子どもサポートチームすわ

小学校4年生から通信制の高校を卒業するまでおよそ10年間、NPO法人「子どもサポートチームすわ」に通っていた兼田亮さん。現在は精密板金加工の会社で働いています。フリースクールで過ごした日々を振り返ってもらいました。

学校とは違うアットホームな雰囲気で、穏やかに過ごせるように

ー「子どもサポートチームすわ」には、どういうきっかけで?

小さい頃から、感情制御が苦手で、ちょっとイライラすると物に当たってしまうことがよくありました。小学校3年生の時に「こころの医療センター駒ヶ根」に1年半ほど入院していて、そこを退院してからどうしようという話になったときに、母親が探してきてくれて。自宅から近かったこともあり、確か退院した翌日に見学に来ました。学校とは違うアットホームな雰囲気だったので、ここなら大丈夫かなと思いました。

ー通い始めてからはどうでしたか?

当時はまだ、感情のコントロールが難しくて。どうして怒りや苛立ちを抑えられないんだろうと悩んでいましたが、中学生や高校生のお兄さん、お姉さんがいろいろと面倒を見てくれました。時々感情的になることはあっても、入院していた頃と比べれば穏やかに過ごせるようになりましたね。正直に言うと、遊びに来ていたような感覚でしたが、ほとんど毎日通いました。ずっと家にいるよりは良かったと思います。

ー勉強も少しは?

中学生になって、さすがにそろそろちゃんとしなきゃな…と思うようになりました。通信制の高校に進んだんですが、全然勉強が分からなくなってしまって。通信制でもスクーリングとテストは本校に行かなければならなかったんです。でも、教室にたくさん人がいる状況が苦手で、行けませんでした。周りの視線が気になって、どうしても落ち着かず、その場にいられなくなってしまう。レポート学習は「子どもサポートチームすわ」でやっていたんですが、テストを受けられないので、辞めて、働くこともちょっとは考えました。それでも中卒と高卒だと、給料はかなり違うかな…と思って、1年間休学して、ひとまず自分で勉強することにしました。

アルバイトをきっかけに、人と関わることに慣れていった

ー休学してでも勉強を続けたのは、高校を卒業して、働こうと思っていたからなんですね。

いずれ働かなきゃいけないというのは、漠然としたイメージとしてありました。社会に出られるかどうかは分からないけど、出られるといいな、というか。高校生になってから、アルバイトを始めたのも影響しているかもしれません。

ーアルバイトはどこで始めたんですか?

ここを支援してくれている会社です。アルバイトをしている先輩がいて、最初は一緒に行っていました。その先輩が卒業してからも、会社の人が親切で、いろいろと面倒をみてくれたので、続けられました。もともと、お金を稼ぎたいと思って始めたんですが、アルバイトを通じて、誰かと一緒に過ごす時間が増えて、人と関わることに少しずつ慣れることができました。

ーフリースクールで過ごして良かったことは何ですか?

勉強も就職も支援してもらい、段階を踏んで将来を描けるようになったことです。学校は集団行動になりますが、フリースクールは個人に寄り添ってくれます。1人でいたい人はずっと部屋で過ごすこともできる。ここは学校というよりは家のような感じです。僕も、最初は1人で過ごすことが多かったですが、それを尊重してくれた。自分の中でも、ずっと1人だと困るし、ある程度周りに合わせないといけないという気持ちはありましたが、だからといって無理はできなかった。焦らず少しずつ、関わりを増やせていけたことが良かったと思います。

ー印象に残っていることはありますか?

うーん、なんだろう…楽器を始めたことですかね。ピアノから始めて、ギター、ドラム、ベースと一通りできるようになりました。ここはスタジオがあって、楽器もそろっていますが、僕は「絶対にやらない」と言っていて。でもやってみたら面白かった(笑)。今はベースを弾いていて、ここに来ている高校生と一緒にバンドを組んで、ライブに出ることもあります。

ー今後の目標があれば教えてください。

正直、働くのは嫌だなと思っていましたが、働き始めたら意外と楽しいです。今の生活は順調だと思っているので、今後の目標というなら現状維持、ですね。